2019年に配布した「ひらきけん通信 第9号」から、記事をピックアップして紹介します。
先生と生徒、それぞれでどんな脳活動が起きている?
私たちはお互いに何かを教えたり教えてもらったりしながら暮らしています。私たちはそのようなヒト同士の教え合いについて、実験室だけでなく、学校のような実際の場において、どのようにすればよりよい教え方、教わり方ができるのかを調べ始めています。
今年4月から始めた取り組みとして、高校における先生と生徒の脳活動の測定があります。装着が簡単で負担が少ないNIRSと呼ばれる脳活動測定機器を用いて、授業中の先生、生徒たちの脳活動を測定しています。これまでの研究では、授業をしている先生と同じ授業を受けている生徒たちの間で、脳活動に同じような変動が現れてくることがわかっています。脳活動に同じような変化が現れる授業と、そうでない授業の間に一体どのような違いがあるのか、学習の効果は異なるのかなど、これまでわかっていなかったことがわかることで、より効果的に子どもたちにものごとを教えることができるようになるかもしれません。(SY)
子ども同士の「教えあい」
これまでは大人と子どもとのやり取りに注目されることが多かったのですが、私たちは子ども同士のやり取りについても調査しています。いまは5歳の子ども同士でオモチャの使い方などを教え合ってもらい、そのときの脳活動を小型のNIRSを使って計測し始めたところです。
この調査を通して、子ども同士での教え合いが成功したときと失敗したときで、そのやり取りにどのような違いがあるのか、また脳活動にどのような違いが現れるのかなどを明らかにしていくことで、よりよい学びをサポートする仕組みに役立てていきたいと思います。(RM)
いつ学ぶのが効果的?
多くの子どもたちは日中に学校で勉強して、帰ってからも家で予習や復習をします。私たちの研究分野では、『(何かを覚える場合は)朝起きた直後よりも、夜寝る直前に記憶する方が良い』などの傾向が報告されています。これらの知見を活用できれば効率よく勉強できそうですが、この知見は実際の学びの場面にも当てはまるのでしょうか。私たちは、高校生の方約100名にご協力いただき、1ヶ月にわたり睡眠記録ができるリストバンドを装着、好きなタイミングで英単語の暗記をしてもらいました。その結果、寝る直前に暗記する方がよいかどうかは個人差があることが確認できました。一律なやり方で勉強するのではなく、個人個人に合った勉強法を提案してあげることで、少ない負担で効率的に勉強ができるようになるかもしれません。(SY)
赤ちゃんのふしぎなおどりを研究する
赤ちゃんは、大人とのやり取りの場面で、手や足をパタパタとリズミカルに動かします。この不思議な運動の謎を解明するために、私たちの研究室では、赤ちゃんは自分の体を動かすことによって、大人の動きを学習しているのではないか?という仮説をたてて研究を実施しました。具体的には、私たちは、女性が踊っている映像をみているときの赤ちゃんの体の動きを記録しました。そして、後日、赤ちゃんがその映像をどれぐらい憶えていたかを測定しました。研究の結果、映像をみているときによく体を動かした子は、そうではない子と比較して、女性の踊りをよく憶えていました。もしかすると、赤ちゃんは楽しそうに手や足を動かしながら、大人の動きを学習しているのかもしれません。(EY)
ゲームから見える脳の活動
勉強だけでなく、ゲームを遊ぶときも、脳は活発に活動しています。私たちは、ビデオゲームをプレイしているときの脳活動の変化も調べています。素早く反応することが求められるゲームをしているときに、前頭前野と呼ばれる額の部分を測ると、活動量が下がることがすでにわかっています。これは、素早く反応しなければならないようなゲームをプレイすると、脳の他の部分をより多く使うために、前頭前野の活動が低下するためだと考えられています。そこで、同じゲームで難しさだけを変えて、前頭前野の活動を比べました。図の赤線が脳の活動量を示しています。計測した結果、ゲームが難しいときのほうが簡単なときよりも活動量が大きいということがわかりました。今後は、ゲームの面白さと前頭前野の関係について調べる予定です。(TK)
ひらき研究室では他にも沢山の研究を行っています.よろしければこちらのページもご覧ください.