2016年に配布した「ひらきけん通信 第6号」から、記事をピックアップして紹介します。


怖がっている表情を見た後、赤ちゃんの頭の中では何が起きている?

赤ちゃんの近くにいる人が何かを怖がりながら見つめています。そのような場面に遭遇したとき、赤ちゃんの頭の中ではどのような反応が起きているのでしょうか?

そこで脳波計測器という装置を使い、1 歳頃の赤ちゃんの脳活動を調べました。すると、怖がっている表情の顔(恐怖顔)を見たあとの脳活動が、落ち着いた表情の顔(中立顔)を見たあとの脳活動よりも、大きくなっていることがわかりました。1 歳頃の赤ちゃんは、怖がってどこかを見ている人がいると、そのあとに出てきたものを早く見ようとすることが分かっています。今回の調査で見つかった、恐怖表情に対する大きな脳活動は、そのような赤ちゃんの素早く見るという反応と関係しているのかもしれません。(RM)


お母さんのアイコンタクトは子どもの運動学習を助ける?

子どもはお母さんやお父さんのアイコンタクト(視線を子どもにあわせること)に敏感です。そして、このアイコンタクトは子どもの模倣学習(周囲の人の行動をまねすることで、新しいことを学ぶこと)を促進させることが報告されています。では、生後間もない赤ちゃんの模倣学習にもアイコンタクトは影響するのでしょうか?

そこで、私たちは、お母さんがアイコンタクトをしながら手の運動を教えている状況(アイコンタクト有)とお母さんが目を閉じたまま手の運動を教えている状況(アイコンタクト無し)で、赤ちゃんの腕の筋肉の活動を測定しました。その結果、アイコンタクト有の状況で赤ちゃんの腕の筋肉はより活動していることが明らかになりました。つまり、赤ちゃんはお母さんのアイコンタクトがある状況では、お母さんと一緒に体を動かそうとしているのかもしれません。生後間もない赤ちゃんの学習面においても、お母さんのアイコンタクトは重要な役割を果たしているようです。(KN)

アイコンタクト有の状況

アイコンタクト有の状況

アイコンタクト無しの状況

アイコンタクト無しの状況


子どもは成功・失敗経験をどのように脳で処理しているのでしょうか?

子どもたちは、日々の生活の中で、様々な成功や失敗を経験します。そして、そういった経験は認知発達に大きな影響を与えると考えています。しかし、これまでの研究では、子どもが成功や失敗をどのよう理解し、それをどのように脳で処理しているのかは明らかにされていません。

ゲームの画面

ゲームの画面

そこで、私たちはこの問題を明らかにするために、「動物を探そう!」という新しいゲームを作成し、5歳児の「成功・失敗体験」に関わる脳活動を測定しています。決められた動物を探し当てることができれば成功、探し当てられなければ失敗といった内容です。研究の成果をもとに、子どもたちの成功や失敗体験を上手に反映させた学習環境を考えてきたいと考えています。(TK)


寝ているときの赤ちゃんとお母さんのコミュニケーションを測定する!

センサーを背中に装着!

センサーを背中に装着!

赤ちゃんが起きているとき、お母さんと赤ちゃんは表情や音声を使って実に様々なコミュニケーションを行っています。では、赤ちゃんが寝ているときには、二人の間ではどのようなやり取りが行われているのでしょうか?

この問題を明らかにするために、私たちは、就寝中の赤ちゃんとお母さんの体の動きを超小型センサーを使って計測しています。もしかすると、赤ちゃんとお母さんは、日中とは異なる就寝時特有のコミュニケーションを行っているのかもしれません!(KY)


赤ちゃんはCG キャラクター同士のやりとりをどのように見ているの?

測定の様子(仲良し?いじめてる?)

測定の様子(仲良し?いじめてる?)

赤ちゃんは正義の味方・いじめっ子・いじめられっ子の三者の関係を理解するのでしょうか?また、そのような三者関係を見て、どのような気持ちになるのでしょうか?

私たちは、正義の味方・いじめっ子・いじめられっ子のキャラクターが登場するアニメーションを作成し、それぞれのキャラクターに対する赤ちゃんの振る舞いと、そのときの脳活動を測定しています。(MS)


赤ちゃんはデジタルおしゃぶりを操作できる?

赤ちゃんはまだ手足を上手に動かせませんが、口でおしゃぶりを上手に吸うことができます。私たちは、赤ちゃんが「デジタルおしゃぶり(開研究室作成)」を使って、テレビの画面を切り替えたり・好きな曲を選択したりできるか研究しています。研究成果から、小さな赤ちゃんが自ら積極的に外の世界に働きかける姿を捉えていきたいと考えています。(SY)


ロボットがフランス語を教える?!

NAOロボットが物語を教えている様子

NAOロボットが物語を教えている様子

子どもたちの言語学習において、どのような「教えるロボット」が有効なのでしょうか?私たちはフランス語を教える機能をNAO ロボットに組み込み、そのロボットを使用して幼稚園児たちにフランス語を教えるという研究を行っています。NAO ロボットは身振り手振りを使って単語だけではなく物語を子どもたちに教えます。今後、子どもたちの学習量や脳活動を測定しながら、「教えるロボット」の有効性を明らかにしていきます。(AJ)


ひらき研究室では他にも沢山の研究を行っています.よろしければこちらのページもご覧ください.