2015年に配布した「ひらきけん通信 第5号」から、記事をピックアップして紹介します。


どうして子ども向けの動きをするのか?

赤ちゃん向け

赤ちゃん向け

大人向け

大人向け

子どもの動作の学習を促進させる現象として「モーショニーズ」と呼ばれる動作があります。モーショニーズはお母さん(もしくはお父さん)が子どもにある動作を教えるとき、大人に向けた動作と比べて、動作がゆっくりと大袈裟になる特徴を持っています。またモーショニーズは、子どもの発達年齢に合わせて変化し、子どもが動作を学習すると簡単なものに変化します。お母さんはどうしてモーショニーズをするのでしょうか?

この疑問を解決するため、子どもと大人におもちゃの使い方を教えているときのお母さんの体の動きと視線を計測しました。その結果、お母さんは子どもに視線を向けているときにおもちゃを強調する動作を行っていました。一方、大人にはおもちゃを見せる動作をせずに次の動きに移っていることがわかりました。お母さんは子どもをよく見ていることで体の動きが大きくなっているかもしれません。(KN)


 赤ちゃんは周りの人をどのように感じている?

大人は相手からうれしいことをされると、こころがあたたかくなります。そして、脳はあたたかいものをさわった時のような反応を示します。また、嫌なことをされると、こころが痛くなります。そして、脳はからだが痛いときと同じような反応を示します。大人を対象にした研究から、いろいろな気持ちと関わる脳の場所が分かりつつあります。

では、赤ちゃんは周りの人をどのように感じているのでしょうか?赤ちゃんはどのような人をみて「あたたかい」気持ちになるのでしょうか?赤ちゃんが泣くのは「こころが痛い」と感じているからなのでしょうか?脳の観点から考えることで、赤ちゃんの気持ちがより分かるようになるかもしれません。このような脳の活動に関する研究をとおして、赤ちゃんがすくすく育つ環境や子育てのしやすい環境を考えていきたいです。(TK)


赤ちゃんは怖がっている表情を、頭のなかでどのように処理しているのか?

実験中の赤ちゃん(かっこいいでしょう?!)

実験中の赤ちゃん(かっこいいでしょう?!)

だれかが怖がりながらどこかを見ていたら、赤ちゃんはどうするでしょう。急いでそちらを見るでしょうか?それとも、おそるおそるそちらを見るでしょうか?

これまで1 歳頃までの赤ちゃんを対象に視線計測器(どこを見ているか簡単に測ることができる装置)を使った調査を行ってきた結果、赤ちゃんは怖がってどこかを見ている人がいると、そのあとに出てきたものを早く見ようとすることが分かってきました。

ではそのとき、赤ちゃんの頭の中ではなにが起こっているのでしょうか?それについて調べるため、現在、脳波計測器という装置を使いながら赤ちゃんの脳活動を調べています。ご機会がありましたら、ぜひご協力をよろしくお願いいたします。(RM)


自分でするってどういうこと?

「自分が何かをした」と思うときはどんなときでしょうか?例えば、ボタンを押すと音がなるとき、人はどんな状況だと自分が押したと強く感じるのでしょうか?大人を対象にした研究で、参加者には他人に指を動かされてボタンを押すという状況で、「自分が押したと感じる度合い」を回答してもらいました。ボタンを押す前になる音(ボタンを押すとこの音がなるんだと思い込まされた音)とボタンを押した後になる音(実際になった音)の高さが同じ場合に、異なる場合と比較して、参加者の「自分が押したと感じる度合い」が高くなったのです。他人に手を動かされているにも関わらず、事前に「こうなる」と考えていたことが実際に起きると、「自分がそのことを起こした」と理解するようです。

では、赤ちゃんはどうでしょうか?赤ちゃんは口に物が近づくと反射的に吸うという行動を示しますが、生後6 ヶ月ぐらいにこの反射はなくなり、吸うかどうか行動を選択するようになります。今後、赤ちゃんが「吸う」ことを選択したときの脳活動を測定する予定です。(FY)


赤ちゃんが見ているものってどんなもの?

赤ちゃんは、心や体が発達するにつれて色々なモノに興味を持つようになります。例えば、お母さんをじっと見つめたり、動くおもちゃを見つけるとそれを目で追ったりします。また、赤ちゃんはお母さんと視線のやり取り(アイコンタクト)を行いながら意思疎通を行います。現在、ビデオ映像の中の赤ちゃんとお母さんの目の動きを網羅的に調べるためのシステム作りに挑戦しています。目の動きから赤ちゃんが持つ素晴らしい学習・コミュニケーション能力を解明することで、赤ちゃんだけなく私たち大人にも役立つような新しい発見をめざしています。(HY)


ひらき研究室では他にも沢山の研究を行っています.よろしければこちらのページもご覧ください.