2014年に配布した「ひらきけん通信 第4号」から、記事をピックアップして紹介します。


デジタルおしゃぶり誕生!

デジタルおしゃぶり

デジタルおしゃぶり

「デジタルおしゃぶり」とは、開研究室で開発され、現在特許出願中のデータ送信機能付きおしゃぶりのことです。形状や重さは普通のおしゃぶりとほぼ同じですが、赤ちゃんがどれだけの強さや頻度でおしゃぶりを吸っているのかを無線でコンピュータに送信することができるようになっています。スマートフォンでもデータを受信できますので、例えばおしゃぶりを吸うのが止まり、赤ちゃんが確実に寝付いたタイミングをお母さんのスマートフォンで確認することができます。また、吸い方に合わせて動くおもちゃを作ることもできます。乳首などの口に触れる部分は交換可能になっていますので、清潔かつ安全に使用することができます。

裏ぶたを外したところ

裏ぶたを外したところ

赤ちゃん研究者の立場から見ると、このデジタルおしゃぶりには赤ちゃんの未知なる能力の発見に繋がる可能性も秘められています。まだ手を自由に動かせない小さい赤ちゃんでも、おしゃぶりを吸うことはできます。赤ちゃんにデジタルおしゃぶりを使って様々なものを操作してもらうことができれば、これまでわからなかった赤ちゃんの積極的な行動が見えるようになるかもしれないのです。今後はこのおしゃぶりを使った様々な研究が予定されています。皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。


子どもは見た目だけでなく動きもかわいい!!

点で構成された映像の例

点で構成された映像の例

なぜ赤ちゃんはかわいいのでしょうか。なぜ赤ちゃんを見ると「守ってあげたい」と思ってしまうのでしょうか。こうした感情を生み出す原因は、赤ちゃんの身体的な特徴にあるという学説があります。その特徴は「ベビースキーマ」と呼ばれ、例えば体に対して大きな頭、顔の中央よりやや下に位置する大きな眼、短くて太い手足などが挙げられています。これまでのベビースキーマに関する研究では、主に赤ちゃんの「見た目」の効果が検討されてきましたが、私たちは赤ちゃんの「動き」にもベビースキーマ的な性質、つまり誰もが「かわいい」と思ってしまう効果がある可能性を検討しました。複数の点によって構成された大人と幼児の動きを再現したCG映像(下図参照)を作成し、それぞれの映像の「かわいらしさ」を学生に評価してもらいました。その結果、見た目はほぼ同じ点の集合体であるにもかかわらず、幼児の動きの方がかわいいと評価されました。子どもはその見た目だけではなく、動き方にも私たち大人を虜にする魅力を秘めているようです。(MY)


お手本を見せるときはタイミングが重要?

子どもから見たお母さんの映像

子どもから見たお母さんの映像

子どもはお母さんやお父さんと触れ合う中で色々なことを学んでいきます。お母さんやお父さんの行動の中で、子どもの学習にとって重要な要素は何でしょうか。私たちは「コミュニケーションのタイミング」に着目し、テレビ電話のような装置を使ってその影響を検討しました。お母さんはテレビを通して自分の子どもに目新しい玩具の使い方を教えました。そのときお母さんが見ている子どもの映像に細工をして、実際よりも数秒遅れて映るようにします。つまりお母さんは数秒前の子どもに向かって玩具の使い方を教えることになります。そしてお母さんが遅れた映像に向かって教えた場合(遅延条件)と、遅れのない映像に向かって教えた場合(ライブ条件)で、子どもがどれだけ正しくお母さんの教えた通りに玩具を扱えるようになったのかを測定しました。

子供の模倣得点

子供の模倣得点

すると、遅延条件の方が子どもの成績が悪くなっていたのです。つまり、お母さんと子どものコミュニケーションのタイミングが僅かでもずれていると、子どもはお母さんから物事をうまく教わることができなくなってしまうのです。この結果はコミュニケーションのタイミングが子どもの学習にとって重要である可能性を示しています。子どもに何かを教えるときは、子どもをよく見て、適切なタイミングでお手本を見せることが大切なようです。(EY)


勉強内容は自分で選んだ方が良い?

小中学校にiPadなどの電子教材の導入が進んでいますが、電子教材の利点についてはわからないことが多く残っています。私たちは電子教材が持つ相互作用性に注目し、学習者が自分で学習する内容を選ぶことによって、どのような教育効果が得られるのか検討しました。小学4年生が実験に参加し、約1ヶ月間タブレット端末を使って読書をしました。

半分の子は自分で読みたいジャンルを選べる一方で、もう半分の子はコンピュータが選んだジャンルを読みました。実験の最初と最後で読書をしているときの視線の動かし方を比べてみると、自分でジャンルを選んだ子の方が視線の最大停留時間が短くなっていました。これは読書の途中で視線が止まらずにスラスラと読めていたことを示しています。また、アンケートでは自己効力感(自分の能力に対する自信)が上昇することもわかりました。このように勉強内容を自分で選択できることには様々な教育効果があるようです。(YT)

読書前

読書前

読書後

読書後

自分で教材を選択できた子の視線の変化


マジックの秘密、教えます!

振動検出課題の様子

振動検出課題の様子

海外のマジックショーでは、観客が全く気づかないうちに観客の腕時計を外してしまう技が披露されることがあります。普通は他人が腕時計に触れたらすぐに気づきそうなものですが、マジシャン達はどうやってこの技を実現しているのでしょうか。この技を行うときの彼らの行動をよく見てみると、まず観客にコインを握らせるなど、腕時計を着けている方の手を強く握るように指示しています。実は、この「強く握る」行為に秘密があったことが私たちの実験で明らかとなりました。実験の参加者には「右手首に装着したバイブレータが振動したらすぐに左手でボタンを押す」という課題をやってもらいました。この課題の成績を右手でハンドグリップを強く握っているときと、何も握っていないときで比較すると、ハンドグリップを握っているときの方が成績が悪くなったのです。つまり手を強く握りしめているときは手首付近の感度が鈍くなることが判明しました。マジシャン達は経験的にこの事実を発見し、腕時計を外す技を編み出したのかもしれません。一歩間違えばスリにも応用できてしまうこの知識、くれぐれも悪用は厳禁です。(MU)


ひらき研究室では他にも沢山の研究を行っています.よろしければこちらのページもご覧ください.