2013年に配布した「ひらきけん通信 第3号」から、記事をピックアップして紹介します。


怖いものほど早く知りたい!?

怖いものほど早く知りたい!?

怖いものほど早く知りたい!?

話し相手がふと自分とは違う方向を見たとき、つい一緒にそちらを見てしまうことはありませんか?もし誰かが怯えた様子でどこかを見つめていたら、その視線の先がとても気になるのではないでしょうか。私たちにとって他人の視線や表情は、身の回りで何かが起きていることを知らせてくれるとても重要な情報です。赤ちゃんはこの情報をどのように活用しているのでしょうか。

生後12ヵ月頃までの赤ちゃんを対象とした調査の結果、怖がっている表情の顔(恐怖顔)を見たときは、落ち着いた表情の顔(中立顔)を見たときよりも素早く視線を動かし始めることがわかりました。赤ちゃんも怖がっている他人を見たときは、何か危険なことが起こっていないか急いで周りを確認しようとしているのかもしれません。(RM)


赤ちゃんが「作る時間」を理解するのはいつ頃から?

「作る時間」を理解するのはいつ頃から?

「作る時間」を理解するのはいつ頃から?

何か作業をするためにはそれに応じた時間がかかることを私たち大人は知っています。もし目を離した一瞬の隙にジグソーパズルが完成していたり、わずか1日で巨大なビルが建造されていたら、普通私たちは驚くはずです。このような「作業量」と「所要時間」の対応関係はいつ頃から獲得されるのでしょうか。

積み木を適切な時間で積み上げる映像(可能条件)と、ごくわずかな時間で積み上げる映像(不可能条件)を生後6~10ヵ月の赤ちゃんに見せたところ、8ヵ月以上の赤ちゃんは不可能条件のときに映像を見る時間が長くなることがわかりました。赤ちゃんは予想外の出来事が起きたとときにその対象をより長く見る性質があるので、この結果は赤ちゃんが生後1年足らずで「作業量」と「所要時間」の対応関係を獲得している可能性を示しています。赤ちゃんは毎日お母さんやお父さんがしている作業を観察しながら、それらにどれくらいの時間がかかっているのか学んでいるのかもしれませんね。(YO)


赤ちゃん向けの動きはどのように獲得されるのか?

おもちゃの使い方を教えるときの動きの違い

おもちゃの使い方を教えるときの動きの違い

お母さんは(場合によってはお父さんも)赤ちゃんと接するとき、「モーショニーズ」と呼ばれる特別な体の動きを行うことが知られています。モーショニーズは大人に向けた通常の動作よりもゆっくりとしていて単純で、身振りが大袈裟になるなどの特徴を持っています。お母さんはどのようにしてこのモーショニーズを身に付けたのでしょうか。赤ちゃんを見れば誰もがすぐにできる動きなのでしょうか。それとも経験によって獲得されるものなのでしょうか。

この疑問を解決するため、赤ちゃんにおもちゃの使い方を教えているときの大学生の体の動きを、長時間に渡って計測しました。その結果、大学生が赤ちゃんと触れ合う時間が増えるにつれて、彼らの動きがモーショニーズの特徴を持つ動きへと変化していくことが明らかとなりました。つまり誰からも教わることなく、経験によってモーショニーズが獲得されていったのです。お母さんやお父さんも同様に、我が子と接することで自然とモーショニーズを身に付けているのかもしれません。今後はお母さんやお父さんを対象とした調査も行う予定です。(EY)


赤ちゃんは人間とアンドロイドを区別できるのか?

映像に対する注視時間の割合(部位別)

映像に対する注視時間の割合(部位別)

アンドロイドと呼ばれる人間そっくりに作られたロボットをご存じでしょうか?顔や体つきはもちろん、皮膚に浮かぶ血管まで精妙に再現されているアンドロイドですが、大人がアンドロイドを目の前にしたとき、ものの数秒で本物の人間ではないと見破ることがこれまでの実験から明らかとなっています。それだけ私たちは本物の人間とそうでないものに対する違いに敏感なのです。では、まだ人間に関する知識や経験の少ない赤ちゃんの場合はどうなのでしょうか。

生後6~10ヵ月頃の赤ちゃんに人間の女性と女性型アンドロイドの映像を並べて見せ、それぞれの映像を見つめる時間(注視時間)を測定しました。もし赤ちゃんがアンドロイドに違和感や気味悪さを感じていれば、両者に対する注視時間に差が生じるはずです。しかし、どの月齢の赤ちゃんも注視時間に差はありませんでした。つまり10ヵ月以下の赤ちゃんは人間とアンドロイドを区別できていないようです。まだ、人間を見た経験が少ない赤ちゃんは、大人よりも人間の定義が曖昧なのかもしれません。


マンガを科学する!

私たちが普段何気なく読んでいるマンガには、一般的な絵画には見られない独特な表現がたくさん使われています。そのひとつがスピード線です。スピード線とは文字通り物体の速度を表現するための線のことで、例えば直線運動を表すときは物体の横に何本も水平な線を引いて表現します。なぜ線を引くだけで物が動いているように見えるのか、よく考えると不思議ではありませんか?なぜ垂直な線や塗りつぶしではなく、水平な線を用いるのでしょうか?

大学生を対象に、様々な図形を球の横に配置した画像を見せ、そのときに認知される運動方向を調べたところ、水平な線を見たときのみ、線を配置した場所とは反対の方向に運動が知覚されることが判明しました。つまり水平な線のみがスピード線として機能していたのです。このようにマンガ的表現の原理を実験によって明らかにすることで、将来的にはより効果的で効率の良いマンガの描き方や、それらを利用したわかりやすい教材の開発に繋がるのではないかと期待しています。(HH)

マンガを科学する!

マンガを科学する!


ひらき研究室では他にも沢山の研究を行っています.よろしければこちらのページもご覧ください.